不動産の生前贈与とは
生前贈与とは
生前贈与とは、個人が所有している財産を、自身の存命中に他の人へ無償で譲り渡す行為を指します。法律上は、贈与する側が自身の財産を無償で与えるという意思を示し、受け取る側がそれを承諾することによって成立する契約です(民法第549条)。
生前贈与の対象となる財産には、現金や預貯金だけでなく、有価証券や不動産なども含まれます。特に土地や建物といった不動産は価値が高額になりやすいため、事前の計画を伴わずに贈与を行うと、思わぬ税負担が生じる可能性がある点に注意が必要です。
不動産の生前贈与と相続の違いとは
不動産の生前贈与と相続の最も大きな違いは、財産が移転するタイミングと、その根拠となる原因にあります。生前贈与は所有者が健康なうちに自身の意思によって財産を移転させるのに対し、相続は所有者の死亡という客観的な事実によって強制的に財産が移転します。
この違いに伴い、課される税金の種類や税率、名義変更の手続きにかかるコストも大きく異なります。
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項目 |
生前贈与 |
相続 |
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財産移転の時期 |
所有者の存命中 |
所有者の死亡時 |
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主な課税 |
贈与税 |
相続税 |
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不動産取得税 |
原則として課税される |
原則として非課税 |
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登録免許税の税率 |
固定資産税評価額の 2% |
固定資産税評価額の 0.4% |
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財産の決定権 |
贈与者の自由な意思 |
遺言または遺産分割協議 |
生前贈与では、受け取る人を自由に指定できる反面、税金や手続きの負担が相続よりも重くなる傾向があります。一方、相続は税負担が比較的軽く抑えられているものの、誰がどの財産を引き継ぐかを巡って親族間で争いが生じるリスクをはらんでいます。
不動産の生前贈与を行うメリット・デメリットとは
不動産の生前贈与を行うメリット
不動産を生前贈与することには、将来の遺産を巡るトラブルを防ぎ、柔軟な財産承継を可能にするいくつかのメリットがあります。
- 自身の意思で特定の人物に確実に譲れる
相続では、遺言書がない限り、遺族全員による遺産分割協議で誰が不動産を引き継ぐかを決めなければなりません。生前贈与であれば、自分が元気なうちに、特定の子供や孫に確実にその不動産を譲り渡すことができます。 - 将来の収益や値上がり分を次世代に移転できる
賃貸アパートやマンションなどの収益物件を生前贈与した場合、贈与した後に発生する家賃収入はすべて新しい所有者のものになります。これにより、元の所有者の手元に現金が蓄積されて将来の相続税が膨れ上がるのを防ぐことができます。また、将来的に周辺の再開発などで値上がりが予想される土地を早めに贈与しておくことで、値上がり前の低い評価額に対して課税を済ませることも可能です。
不動産の生前贈与を行うデメリット
多くのメリットがある一方で、生前贈与には見落とせないデメリットやリスクも存在します。
- 税金の負担が相続に比べて重くなりやすい
贈与税は、相続税に比べて基礎控除額が低く、税率も高く設定されています。また、後述する不動産取得税や登録免許税といった、不動産の名義を変更するための実費も、相続に比べて割高になります。 - 相続時の税額軽減特例が使えなくなる
相続の際には、一定の要件を満たすことで自宅敷地の評価額を最大80%減額できる小規模宅地等の特例という非常に有利な制度があります。しかし、生前贈与をしてしまうと、この強力な特例を適用することができなくなります。結果として、相続で引き継いだ方がトータルの税負担が大幅に軽かったという失敗例も少なくありません。
不動産を生前贈与する際にかかる費用と税金
不動産の生前贈与の手続きに必要な諸費用
不動産の生前贈与を実際に行う際には、税金とは別に、手続きそのものに必要な諸費用が発生します。主な費用は以下の通りです。
- 登録免許税
法務局で不動産の名義を贈与者から受贈者へ変更する(所有権移転登記)際に納める税金です。生前贈与の場合、その不動産の固定資産税評価額の2%に相当する金額を納める必要があります。 - 司法書士への報酬
登記手続きは専門的な知識を要するため、司法書士に依頼するのが一般的です。依頼する内容や不動産の数によって異なりますが、およそ5万円から10万円程度が相場となります。 - 必要書類の取得費用
戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、固定資産評価証明書などを役所で取得するための実費が数千円程度かかります。
不動産の生前贈与で課税される税金の種類と仕組み
不動産の生前贈与に関わる税金は、主に贈与税と不動産取得税の2種類です。
- 贈与税
贈与を受けた人が納める税金です。一般的な課税方法である暦年課税では、年間の基礎控除額が110万円となっており、これを超える部分に対して累進税率が適用されます。不動産は評価額が高いため、一括で贈与すると非常に高額な贈与税が課される仕組みになっています。なお、一定の要件を満たせば、累進課税を避けて将来の相続時に精算する相続時精算課税制度を選択することも可能です。 - 不動産取得税
売買や贈与などによって不動産を新しく取得した人に課される地方税です。相続の場合は非課税ですが、生前贈与では原則として土地・建物の評価額の3%から4%(特例による軽減措置あり)の税金が課されます。
不動産の生前贈与が節税に繋がるケースとは
不動産の生前贈与は、すべてのケースで得になるわけではありません。しかし、以下のような特定の条件や状況においては、相続よりも有利に働き、全体の税負担を抑えることに繋がります。
第一に、前述した収益物件を贈与する場合です。毎月まとまった家賃収入を生み出すアパートやマンションを、比較的若いうちの子や孫に贈与することで、将来の相続財産となるはずだった現金を子世代に直接分散させることができます。
第二に、値上がりが確実視される不動産を保有している場合です。将来的に新しい駅ができる、周辺の商業開発が進むといった理由で、数年後に土地の価値が大幅に上昇することが分かっている場合、現在の低い評価額の段階で相続時精算課税制度などを利用して贈与を行えば、値上がり後の価値に対する高い相続税の課税を回避できます。
第三に、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する場合です。これは贈与税の配偶者控除(通称:おしどり贈与)と呼ばれる特例で、最高2,000万円までの居住用不動産(またはそれを購入するための資金)の贈与が非課税となります。基礎控除の110万円と合わせて最大2,110万円まで非課税で自宅の名義を配偶者に移せるため、将来の相続財産を事前に確実に減らす手段として有効です。
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不動産の生前贈与は、誰にいつ、どの不動産を渡すかによって、最終的な経済的メリットが大きく変動します。目先の税金だけを見て生前贈与を決断してしまうと、相続時の特例が使えなくなったり、登記費用や不動産取得税などの余計な出費が重なったりして、結果的に大損をしてしまうケースも珍しくありません。また、特定の子供だけに不動産を贈与した結果、他の兄弟から遺留分の侵害を主張され、深刻な家族トラブルに発展するリスクも考慮する必要があります。
得をするか損をするかの正しい判断を下すためには、民法の視点から見た遺産分割や遺留分のルールと、税法の視点から見た各種控除制度の両方を精緻に組み合わせてシミュレーションを行うことが不可欠です。
弁護士法人プレシャス総合法律会計事務所では、不動産や相続問題に精通した弁護士がお客様の資産状況やご家族の意向を丁寧にヒアリングした上で、最も不利益の少ない最適な承継プランをご提案いたします。生前贈与を進めるべきか、あるいは相続まで待つべきかお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所までお気軽にご相談ください。今後の生活の安心と、大切なご家族の円満な財産承継を全力でサポートいたします。


